2009年4月25日(平成21年度第7回理事会承認)
2020年8月12日改定
一般社団法人 日本ヨーガ療法学会
第1章 総則
日本ヨーガ療法学会認定ヨーガ療法士(以下認定ヨーガ療法士)は日本ヨーガ療法学会会則に則り「ヨーガ療法の原理とその応用を研究し、併せて関連諸領域との交流を図り、ヨーガ療法の普及を促進して社会福祉の向上発展に貢献することを目的とする」事をヨーガ療法指導の旨とせねばならない。以下、認定ヨーガ療法士の守るべき倫理を規定し、認定ヨーガ療法士が我が国にあって伝統的ヨーガの智慧を現代社会に応用して、人々の全人的健康促進の為に健やかな社会貢献を行う指針とする。
第2章 能力の研鑽
1:社会貢献としての健康促進
認定ヨーガ療法士の行う社会貢献とは、人々の全人的健康促進である。ヨーガ療法は、病気の診断や治療を行うものではない。従って、西洋医療等他の医療分野の病気診断に関与するような言動や、治療まがいの言動を認定ヨーガ療法士は厳に慎まねばならない。ヨーガ療法の目的とする全人的健康促進とは、肉体的(フィジカル)、社会的(ソーシャル)、精神的(メンタル)、宗教的(スピリチュアル)な健やかさの促進であり、これら各次元における全人的健康促進がヨーガ療法実習者(以下実習者)自身によって為されるようなヨーガ療法指導ができるよう、認定ヨーガ療法士はヨーガ療法指導法の研鑽に励まねばならない。その為にも、心身医学における治療的自我の研鑽に努め、ヨーガ療法指導の技法向上とヨーガ療法士としての人格向上の努力をし続けねばならない。
2:伝統的ヨーガとヨーガ療法
認定ヨーガ療法士はヨーガ療法の基盤たる伝統的ヨーガを生涯にわたり学び続け、自己向上の精神的基礎とさせねばならない。同時に、伝統的ヨーガの応用部門たるヨーガ療法指導法の研鑽にも努め、専門家として我が国の社会の安寧と人々の健やかな生活を守り、人権を尊重して活動せねばならない。
3:伝統的ヨーガとしての4大ヨーガ
認定ヨーガ療法士が自己研鑽に努める伝統的ヨーガとは、インドに古来伝承されているラージャ・ヨーガをはじめ、バクティ・ヨーガ、カルマ・ヨーガ、ギヤーナ・ヨーガの各智慧である。認定ヨーガ療法士は、これらの伝統的ヨーガの智慧を人々の全人的健康促進法として役立てるだけでなく、自己研鑽の糧ともさせ、我が国にあって上質なる人格を持って生きる社会人たらねばならない。
4:日本ヨーガ療法学会と各都道府県認定ヨーガ療法士会の、研究総会と研修会
認定ヨーガ療法士は、保健・医療・福祉・心理、教育、産業、司法等、各分野にわたりヨーガ療法の専門家として、自らの能力向上に努めねばならない。その能力向上努力は、日本ヨーガ療法学会やその下部組織たる各都道府県認定ヨーガ療法士会が主催する研究総会・各種研修会だけでなく、他の専門家団体が主催する学会や研修会等を利用して自己研鑽に努めねばならない。
5:最善の指導努力
認定ヨーガ療法士は、保健・医療・福祉・心理、教育、産業、司法等、各分野にわたるヨーガ療法の専門家として、実習者の利益のために最善のヨーガ療法指導努力を払わねばならない。実習者との相互信頼に基づきなされるヨーガ療法指導であることをよく自覚し、自己の専門知識をもって最善の努力を払わねばならない。実習者の弱い立場を利用してのヨーガ療法指導は、厳に慎まねばならない。
6:全人的健康促進度の判定
認定ヨーガ療法士はヨーガ療法指導計画に従って適切にヨーガ療法を指導し、適宜、再評価と指導方法の修正、変更を加えながら実習者の全人的健康実現程度を判定せねばならない。健康促進の達成度はそのつど医師はじめ他の専門家と協議するとともに、その後の指導について協議検討する必要がある。ヨーガ療法の目指す全人的健康実現は、一生にわたる人格的向上にあるので、実習者の生活習慣全般を視野に入れた指導ができるよう、認定ヨーガ療法士は常にヨーガ療法指導のための自己研鑽に努めねばならない。
7:誇大効果宣伝の禁止
認定ヨーガ療法士は、ヨーガ療法を実習する人々に対し、ヨーガ療法の実習目的や実習方法、その効果について説明し、理解が得られるよう努めねばならない。そのとき、公序良俗を越えて、虚偽もしくは誇大な説明により実習者を誘導してはならない。実習者の健康回復に関して、認定ヨーガ療法士の過大な自己宣伝や指導効果を誇示する行為は、ヨーガ療法自体の信頼性を揺るがすだけでなく、認定ヨーガ療法士全体の品位を著しく傷つけるものであることを自覚しなければならない。
第3章 法と人道の遵守
1:社会人としての法の遵守
認定ヨーガ療法士の務めは、人々からの信頼で成り立つ専門分野であることからして、種々の国内法に反する行為は重大な反社会的問題として扱われ、大きな社会的制裁を受けることを認識しなければならない。
2:ヨーガ療法士としての法の遵守
認定ヨーガ療法士の行為が、「日本ヨーガ療法学会認定ヨーガ療法士制度規則」第7章認定ヨーガ療法士の資格喪失、第12条の(1)~(4)号のいずれかに該当するときは、資格認定委員会の議を経てその資格を喪失する。従って認定ヨーガ療法士は認定を受けた瞬間から専門家としての自覚をもたなければならない。その立場を悪用した犯罪や不正行為に断じて荷担してはならない。特に、実習者の弱い立場を利用しての霊感商法まがいのヨーガ療法指導を行ってはならない。また、犯罪や不正に巻き込まれないよう、つねに自分を律しなければならない。また、実習者の体に直接触れる等、ヨーガ療法指導から逸脱しての指導行為も医師法等、他の法律に抵触する恐れがあり、厳に慎まねばならない。
3:不適切用語使用の禁止
認定ヨーガ療法士は、実習者の国籍、民族、宗教、文化、思想、信条、門地、社会的地位、性別および障害の如何を問わず、人権擁護の立場から、差別や誤解を招くような不適切用語をいかなる場合においても使用してはならない。不適切な用語を使用することは、個人の品位を低下させるだけでなく、これまで築きあげた指導者/実習者間の信頼関係を壊すことにもつながり、ひいてはヨーガ療法自体の社会的信頼性も損なうからである。
第4章 報酬
1:適正な指導報酬の請求
ヨーガ療法指導報酬請求の要件としては、指導記録に基づいた正確で常識的な請求が必要である。指導報酬は、ヨーガ療法指導の指導実態(内容、能力、実績)や実習者の支払い能力、法的妥当性等を総合的に勘案した上で、成立するものであることを認識しなければならない。特に勤務先における報酬額等は、認定ヨーガ療法士と雇用主との契約であり、両者が十分納得できる妥当なものでなくてはならない。ヨーガ療法を特別視しての不当な報酬の要求は、厳しく戒めなければならない。こうした行為は認定ヨーガ療法士個人の良識・良心が問われるだけでなく、ヨーガ療法全体の品位を問われることにもつながることを肝に銘じ、厳に慎むべきである。
2:実習者からの礼金等の収受の自重
実習者が、医療機関の診療費や利用料等の形で、受けたサービスに対する規定代価を支払っている場合、その実習者から上記以外の謝礼として金品等を受け取ることは慎まなければならない。また、実習者に正規以外の謝礼としての金品を要求することがあってはならない。
特に、実習者の精神性や宗教性の弱点を利用して、実習者を不安ならしめてヨーガ療法指導に関する特別な報酬を要求してはならない。
3:利害関係者からの贈与・接待を受けない
ヨーガ療法に関する委託研究等においては、その研究の学術的な意味や必要性の大きさ等の条件をそろえるだけでなく、その方法に倫理性・正当性があり、結果に偽りがなく妥当性がある等々の要件が求められねばならない。こうしたヨーガ療法研究において、その正当性が疑われかねない贈与・接待等を受けてはならない。
第5章 個人情報守秘と各種情報開示
1:義務としての秘密保持
認定ヨーガ療法士は、その務めを遂行する過程で知り得た実習者の様々な個人情報を正当な理由がある場合を除き、決して他に漏らしてはならない。認定ヨーガ療法士でなくなった後においても、同様とする。
2:個人情報と個人の秘密
個人情報とは、ある個人を特定できる一切の識別情報のことをいう。具体的には、①氏名、生年月日、性別、住所、電話番号、本籍地や出身地など基本的事項に関する情報、②夫婦、親子、兄弟姉妹、婚姻歴など家庭状況に関する情報、③収入、納税など資産や経済に関する情報、④学業・学歴、職業・職歴、犯罪歴など経歴や身分に関する情報、⑤病歴、病名、障害、病状などの心身の状況に関する情報、⑥支持政党、宗教などの思想や信条に関する情報等が挙げられる。個人情報保護法第3条は、「個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきものであることにかんがみ、その適正な取扱いが図られなければならない」と基本理念を謳っていることから、認定ヨーガ療法士は個人情報の取得・管理は慎重・適正に取り扱うよう心がけねばならない。個人の秘密とは、一般に知られていない事実であって、実習者自身が他人に知られたくないことをいう。また、その事実を公表することで客観的に本人が相当の不利益を蒙ると認められることで、内容の如何は問わない。個人の秘密が漏洩すると、重大な人権侵害に発展する可能性が高いため、更なる配慮が必要である。
3:情報漏洩の防止
個人の秘密は、実習者の承諾なしに外部に漏らしてはならない。認定ヨーガ療法士は、実習者個人の秘密を不当に侵害しないようにあらゆる努力を払わねばならない。たとえば、記録用紙の保管、公共の場での実習者個人に関する会話等である。
4:実習者本人への情報開示
実習者の個人データは正確性を確保し、その安全管理のために必要かつ適切な措置を講じるべきであり、第三者への情報の漏洩に対しては細心の注意を払う必要がある。また実習者本人からの求めがあれば、開示、訂正等を行わなければならない。
5:ヨーガ療法指導者同士の情報漏洩
認定ヨーガ療法指導者同士の個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重かつ適正に取り扱われなければならない。各個の認定ヨーガ療法士は、我が国のヨーガ療法指導を代表してヨーガ療法指導の任に当たっていると言える。従って、一人のヨーガ療法指導者の社会的信用の失墜は、ヨーガ療法士全体の社会的信用にも影響しかねない。従って、認定ヨーガ療法士同士にあっては、互いの保健・医療・福祉・心理、教育、産業、司法等にかかわる各専門性を尊重し、無用な個人批判や個人情報の漏洩は決して行ってはならない。認定ヨーガ療法士としての資質に疑問のある場合は、日本ヨーガ療法学会資格認定委員会に上申して、その裁定を待たねばならない。
6:ヨーガ療法自体に関する広報と情報開示
認定ヨーガ療法士が保健・医療・福祉・心理、教育、産業、司法等、各分野にかかわる専門家として、各種メディアを通じて専門情報を提供することは、社会的に重要な活動である。こうしたヨーガ療法に関する広報と情報開示の際には、必ず日本ヨーガ療法学会事務局を介して、常に最新の情報を収集し、その配信に努めなければならない。
第6章 安全管理
1:リスク・マネジメント
認定ヨーガ療法士がヨーガ療法指導を行う際には、その安全性を保つことが第一に考慮されねばならない。実習者の心身状態の観察を怠り、他の専門家の意見を受容しないところには、必ず指導ミスが発生することをも十分認識しておく必要がある。そのため、ヨーガ療法を指導する際には安全への配慮を十分に行わねばならない。こうして実習者の心身に不用意に加える危害防止に努めるリスク・マネジメントに真摯に取り組むことは、ヨーガ療法指導の質を高めることになることを、認定ヨーガ療法士は良く認識しておかねばならない。
2:事故発生の報告と分析
リスク・マネジメントに対する取り組みを有効に機能させるには、事故発生の報告と分析を、日本ヨーガ療法学会諸部門と提携して日常的かつ組織的に行うことが大切である。また、日本ヨーガ療法学会も、これらの情報を安心して報告・共有できる環境の整備に努める必要がある。
3:事故発生に対する対応
万一、指導事故が発生したときには、事故そのものに関する報告・対処を日本ヨーガ療法学会に通知するとともに、経過の記録・報告、実習者や家族に対する説明等を、率直かつ真摯に行うべきである。
第7章 他専門分野との協調
1:報告と記録の義務
認定ヨーガ療法士は、実習者に対して指導を行った場合、指導者名、指導時間、指導内容等々を正確に記録しなければならない。また、実習者に対する評価の内容や指導結果等について、主治医、その他関係者へ定期的に、或いは変化があった場合には速やかに、口頭あるいは文書で報告をしなければならない。適切な内容の報告・記録は、専門家としての責任ある仕事の証である。また、正確な記録はヨーガ療法の効果を検証する根拠としても重要である。同時に、インフォームド・コンセントを受ける際の資料として欠かせないからである。
2:記録の保存義務
ヨーガ療法指導記録の保管義務は法的に設定されてはいないが、指導の日から2年間は適切な管理・保存を行わなければならない。多くの医療や心理療法機関でも、法定保存期間に基づき、診療録および診療関係書類をかなり長期間にわたって管理・保存している。ヨーガ療法もこうした他専門分野との協調をはかる上においても、再来の可能性がある実習者のものは勿論のこと、指導記録や個人情報記録等は長く保存しておく心積もりでいることが望まれる。
3:他職種への尊敬・協力
認定ヨーガ療法士の専門領域は、保健・医療・福祉・心理、および教育の分野にまで広がっている。社会からヨーガ療法に向けられるニーズも多様化しており、世界的には司法・産業界においてもヨーガ療法に対する期待が寄せられている。こうした社会からの要求に応えるためにも、日本ヨーガ療法学会での学術活動を通じての情報の共有が重要である。こうした他専門家との協調の為にも、認定ヨーガ療法士は、他の専門家が担っている役割の重要性を認識し、他専門家を尊敬し、協力する姿勢をもたなければならない。
4:他専門家の権利・技術の尊重と連携
それぞれの専門家には、付与された権利・権限があり、また、その専門家にしかできない技術を有している。認定ヨーガ療法士は、ヨーガ療法指導における独善的な判断・行動を戒め、適切な委託・協力を他専門家に求めるべきである。他専門家の権利・権限、技術を尊重し、連携することが重要な規範であることを認知していなければならない。
5:関連領域との綿密な連携
認定ヨーガ療法士は、医学・心理学的な側面のみでなく、実習者を取り巻く生活全般に配慮してヨーガ療法を指導する職種である。そのため、関連する関係者との幅広い連携が欠かせない。医師、看護師、保健師、理学療法士、言語聴覚士、介護福祉士、社会福祉士、ホームヘルパー等々のほか、行政職との連携も重要である。これらの人々と広範なネットワークを築くことで、実習者が生活習慣病等ストレス関連疾患から離脱できるよう支援する必要がある。また、専門家間の交流を通して相互に信頼関係を築くことが重要である。
第8章 次世代教育とヨーガ療法士応用・特別研修履修義務
1:次世代ヨーガ療法士の育成
認定ヨーガ療法士が、ヨーガ療法を指導する後輩を教育し育てることは、ヨーガの智慧を持って広く人々の全人的健康促進への貢献に、時代を越えて寄与するためにも大切であることを認知しておかねばならない。
2:後輩育成の形態
次世代ヨーガ療法士の育成形態としては、ヨーガの智慧を世に広める種々の活動は勿論、ヨーガ療法を学ぶ生徒からの指導者育成、またヨーガ療法士養成講座への紹介等が挙げられる。これら様々な次世代ヨーガ療法士育成教育活動は、一貫した体系の中で実施される必要がある。従って、日本ヨーガ療法学会のヨーガ療法士育成教育活動を指針として行われねばならない。
3:学会認定ヨーガ療法士は日本ヨーガ療法学会認定ヨーガ療法士制度規則に規定される認定研修会(応用・特別研修会)を履修し、所定の資格更新単位を所定の期間に取得しなくてはならない。
4:学会認定ヨーガ療法士は学会活動において取得した他の学会員の住所、氏名、メールアドレスを利用して独自に学会員を勧誘し、学会の許可なく活動したり、学会の方針とは異なる活動等を行ってはならない。
第9章 その他
1:以上各章に記述されている倫理規定以外の諸問題が発生した場合には、その都度、日本ヨーガ療法学会理事会の裁定を待って、認定ヨーガ療法士の倫理規定とする。
<参照>
「日本ヨーガ療法学会認定ヨーガ療法士制度規則」
第7章 認定ヨーガ療法士の資格喪失
第12条 認定ヨーガ療法士は、次の各号のいずれかに該当するときは、認定委員会の議を経てその資格を喪失する。
(1)本人が資格の喪失を申し出たとき。
(2)日本ヨーガ療法学会会員の資格を喪失したとき。
(3)資格更新の手続きを行わなかったとき。
(4)認定委員会で認定ヨーガ療法士として不適当と認めたとき。
以上